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エッセイ『時をかける父と、母と』

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父が若年性のアルツハイマー型認知症であるという診断を受けた。一方で母は61歳で、がんステージⅣと診断された。そんな33歳の娘がイラスト・版画も含めて記録したエッセイ本。全88ページ。 カバーの色を2種類からお選びいただけます。 
 幻冬舎×テレビ東京×note「コミックエッセイ大賞 」にて、全4212作品の応募の中から準グランプリを受賞しました。 
 表紙はリソグラフ印刷。表紙の色は写真と異なる場合があります。 
 ◾️「はじめに」よりーー 
 我が家には、時をかける少女、ならぬ、『時をかける父』がいる。 主な生息場所はリビングのソファかダイニングテーブル。大概テレビを見ているか寝ているか食べている。 
 父は66歳。若年性のアルツハイマー型認知症であるという診断を受けた。 
 今日は何日? いまは昼なのか夜なのか。 いま家には誰がいる?   そもそも自分に子供なんていたっけ?  僕は働いたことがあったかな?  お母さんはどこにいったかな? 妻は?  おや、目の前に現れたこの人は僕の孫だっけ、娘だっけ?  いま、父の世界の中では、過去も未来も星座も越えて、他の人にはわからない速さで、毎日、誰かが突然消えたり現れたりしている。 
 もういまとなっては、娘の私にも、3年前の父のことが思い出せない。そのくらい父の変化は目まぐるしい。 だけど変わったのは父だけではない。 
 父が認知症であると診断された1年半後、 
 母 が が ん で あ る という診断がおりた。 
 発見しにくい場所にあったことですでに他臓器への転移もあり、すでに『ステージⅣ』であり手術もできないという。 
 
 
 「 が ん で す 」 
 
 
 「 ガ ー ー ー ン 」 
 
 
 ……っていう漫画みたいな展開は、実際、ある。 頭の中で「ガーーーン」という音がしたような気がした。 隕石が落ちてきたような気分だった。 
 そしてがん宣告の1年半後、母は逝った。 
 父が認知症であるという診断は、私たち家族にとっては意外ではなかった。明らかに様子のおかしい数年間をみていたから、むしろ病気を疑っていたのは家族である私たちのほうで、診断がでてホッとしたくらいだった。 
 父は認知症で、これからおそらくどんどん悪化していく。きっと近い将来に介護が必要になってくる。さあ、どうしよう。そんな悩みは母を中心に家族が抱えたけれど、母の病気は、私たち家族の「近い将来」に描かれていなかったのだ。 
 そして私は、認知症を患った父と、がんで逝った母を見送るまでのこの2年間の記録を中心に、家族の生活の一側面を公開することにした。なんだか暗い話のようにも思えるけれど、私の手元に残ったのは、ある家族の日常の記録に他ならない。 私たちは、それなりに楽しく生きていたんだ。 
 この日々が、そう暗くない大事な時間であったことを、私はいつまでも忘れずにいたい。

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